【研究所ブログ第32回】数学的活動を通して授業をブラッシュアップ 教科横断も
令和6年8月31日(土)、理数系教科研究会(数学)は研修会を開催します。テーマは「授業ブラッシュアップ研修会」 ―数学的活動を通じて―」です。
詳しくは→https://k.tokyoshigaku.com/seminar/risuu/post-1965.html
昨年度3⽉に宿泊研修会で、実社会と数学との関わりをテーマとする授業づくり研修会を実施しました。グループワークを取り⼊れ、他校の先⽣⽅とアイディアを出し合いながら授業を作るという研修会は好評でした。
共感を得られたのは、そのような対話型の研修だったこともありますが、数学的概念を教師が説明することによって理解させるのではなく、⽣徒の主体的な活動を通じて理解を促す授業のアイディアを出し合えたということも大きな要因でした。
この生徒の主体的な活動を、「数学的活動」と明確に置き換え、その活動を通して数学的モデリングを授業において行うことが国際的な流れになっています。新学習指導要領の改訂にあたり数学のワーキンググループにかかわった見識者は、その流れを導入しようとしました。
その先進的な数学の授業をプランするグループの流れに今回お招きする⽇本⼤学⽂理学部の⼭崎浩二先⽣は位置しています。山崎先生は『生徒にとって、数学の学習内容は、自分たちの手で工夫したり、つくり出したりすることができる、という意識はまだ少ない。しかし、日常の事象を数学を使って解決する活動では、「目的に合わせて、自分たちで条件などを設定する」活動も要求される。たとえば、数学的モデル化の過程を経験させる授業などでは、「・・・として考えてみる」といった、仮説を立てて考える場が設定される。数学をつくり出す過程をさらに顕在化させるとともに、数学の学習をより生成的なものにできるだろう』(「日本数学教育学会誌」94 巻 (2012) 11 号「算数・数学を学習することの意義を考える
~教師の,数学の学習に向き合う姿が,算数・数学の学習の楽しさ・大切さを伝える」
山崎 浩二著)と考え、このような数学的活動を多くの先生方と構想し実践してきました。
その豊富な経験から、授業づくりのアドバイスをいただき、授業をブラッシュアップするワンデイ研修会を企画しました。
また、この数学的活動で行われる課題設定、課題解決、創造性の発揮は、昨年日本で行われたICTMA (The International Community of Teachers of Mathematical Modelling and Applications)でも主要テーマとして展開され、この3つのアプローチはSTEAMや学際的な学びともつながりがあることが大いに議論されたということです(『数学的モデリングと他分野の教育研究の連携とその推進に向けて』池田敏和・佐伯昭彦・西村圭一「日本数学教育学会誌第106巻 第7号 2024年)。
数学的活動を通じて行う数学的モデリングは、各教科の縁の下の力持ちという側面もありますが、計算道具としてだけではなく、思考の基礎としての意味が再発見されつつあるのかもしれません。