【研究所ブログ第15回】初任者研修のコレクティブインパクト
今年度、研究所は、コレクティブインパクトというレンズで研修を観る挑戦をしました。コレクティブインパクトは、社会課題の解決に向けて、異なる分野やセクターに属するメンバーが協力して解決に挑むことです。
説明するまでもなく、社会課題は複雑化し、一人の力では解決できない状態になっています。SDGsなどに取り組む学びが多くなっていますが、そのほとんどの場合、NPOや企業、国連広報センター、大学などの多様な団体と協働しています。それによって、各団体は新しい価値を見出し、困難を解決するイノベーションを新たに生み出しています。
このように、異なる分野の人々や団体が協働することによって市場や人脈が広がり、新たな気づきやスキルが生まれることがコレクティブインパクトと呼ばれています。ということは、委員会の先生方は、外部講師や他校の授業の事例や様々な場所にフィールドワークに行ったりして研修のデザインをしているのですから、これこそコレクティブインパクトを生み出す活動なのではないかと改めて気づきました。
今年度の初任者宿泊研修で、コレクティブな行為の新しい手法として、OST(オープン・スペース・テクノロジー)という大まかなテーマについて関心や情熱を持つ関係者が一堂に会し、 自らが解決したい問題や議論したい課題を提案したうえで、自主的に話し合いを進める手法を活用しました。この手法によって参加者には勇気の火が灯り、研修で学んだことを自らのツールに転換し、現場で適用しようというモチベーションを生み出していました。
その姿に、委員の先生方も研究所のスタッフも、このOSTは、コレクティブインパクトを生み出す可能性を見出しました。実際、この初任者研修のファシリテーターとして協力してくださった「学校づくり委員会」の先生方は、3月9日に実施した研修「<モヤモヤリフレクソロジー> 学校教育とAI ~ChatGPTなどのAIとの共存の仕方~」において、OSTを導入したのです。
その時の参加した先生方のアンケートの回答は次の通りです。
- オープンな議論と日々抱える課題について、共有と整理、分析と解決までを協働して進めたことが新たな気づきと学びに繋がりました。
- 自分にない問いを考えることを考えることができた。
- 初めて体験したが、この手法を授業内でも活用できればと感じた。
- 同じ問題意識からスタート出来るので、対話のスタートがスムーズ。温まって来たところで、話題がドライブしていったので、深まった。
- めちゃくちゃ楽しかったし、伝えることの難しさを学びました
- 興味がある話題から議論に入れるので、入りがスムーズでした。くじなどの割り当てでないので、深い議論ができたと感じています。
- 初めての人でも導入がしやすい手法だと感じた。
- 討論したい内容が似ていたので、楽しくグループワークをさせていただきました。
- 具体的な議論をしていた班もあったことが最後のまとめでわかり、おもしろかったです(うちの班は抽象度の高い話をしていました)。
- 活発に進んだので時間が短く感じた。自然発生的に書記やまとめを他先生方がして下さったのは、ありがたいような申し訳ないような。
- 同じ関心を持った方との協働は、内発的動機を刺激し、これからのモチベーションに繋がるものとなりました。"
- アイスブレイク、ラベルによる意見出し、共通テーマに集まるバズセッション、と非常に密に練られたグループワーク設計によって、とても話しやすく、さらに議論を深めていきたくなりました。
- 非常に充実した話ができた。机上の紙が有効に働き、話の全体像を確認し、ゆきつもどりつしながら深めることができた。
- 枠にとらわれない研修内容で楽しく参加させていただいております。
- 研修会に参加されている先生が、まさに今後の私学を創り上げていくものと確信しています。学校づくり研究会の良い雰囲気が、他の委員会にも普及されるものと思います。
- OSTを用いたディスカッションは有意義でした。同じテーマでも色々と派生していくので、これは人間にしかつくれないものだなと感じました。ありがとうございました。
このように、OSTはコレクティブインパクトを生み出すレバレッジポイントになるという委員の先生方と研究所スタッフの実感はより深まる結果となりました。しかも、アンケートを観ながら、モヤモヤリフレクソロジーをしていたところに2つの学校の先生からメールが届きました。
「初任者宿泊研修に参加した本校の教員が高校の授業でOSTの手法を取り入れました。授業の様子の写真を送ります。」
「私は初任者宿泊研修に参加し、ずっと自分も実施したいと考えておりました。このたび、新年度高校1年生対象のオリエンテーションでOSTを行うことになりました。」
そして、3月21日(木)~ 22日(金)の1泊2日で行われていた理数系教科研究会(数学)合宿企画「授業づくり合宿~小田原 春の数学祭~」も本日がその最終日です。やはりOSTを取り入れた研修でした。
昨夜も静かな情熱と共にディープな語り合いになったことは想像に難くないでしょう。コレクティブインパクトの輪は広まっています。