【研究所ブログ第9回】哲学対話のワークショップ ~安心安全で考えを深めていく対話

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昨年多くの私立学校で教育内容において話題になったのは、「生成AI」と「探究」でした。そして生成AIではプロンプトエンジニアリング、探究では「問いづくり」が難しいという声がたくさん寄せられました。その流れと同期するかのように、文系教科研究会(国語)の委員会では、<「ワークショップ」 哲学対話 ―ゆっくり、じっくり考える―>が企画され実施されました。

哲学的な問いを対話を通してじっくりと考えることで、授業や学級活動、あるいは教職員間のコミュニケーションなど、さまざまな「対話」のヒントになり得るのではないか?時間のかかる「対話」を通してこそ得られる何かを土屋陽介先生(開智国際大学教育学部准教授)のワークショップを通じて考える機会にしたいという呼びかけに、多くの学校の先生が参加しました。

※文系教科研究会(国語):委員長 畑澤正一先生 (第7支部 大森学園)、委員 鈴木千穂先生(第1支部 共立女子)、宇野幸弘先生(第3支部 晃華学園)、山田寛治郎先生(第7支部 香蘭女学校)、 駒ヶ嶺泰暁先生(第9支部 中央大学杉並)、沖奈保子先生(第12支部 ドルトン東京学園)

当日行われた土屋先生の哲学対話の方法の講義については、先生もかかわっているNHK for School(https://www.nhk.or.jp/school/sougou/q/)が参考になります。今回は、実際の哲学対話の体験が中心でした。

土屋先生は、参加された先生方に幾つかの問いを提示し、しばらく各人それぞれの問いについて思いを巡らす時間をとりました。問いを選んでいく丁寧な作法は、普段の教科授業にも必要だという気付きを生み出していました。その丁寧に問いを選んだあと、小グループに分かれて哲学対話の体験が行われました。

選ばれた問いは「どんなルールでも必ず守らないといけないか?」でした。哲学対話を実施したのは初めてだという先生も多かったのですが、国語の先生が多かったということもあり、自然と哲学対話になっていました。まずは、ルールを守らなければいけないという学校での具体的な状況を出し合い、そこで生徒に問い返すポイントについて対話するという展開になっていきました。

「ルールについてどんなイメージをもっているのか」「ルールはそもそも常識に基づいているのではないか」「生徒と教師の権力関係をどのように変えるのか」「ルールは変えられるのか」「守るということはそもそもどういうことなのか」「社会の動きと校則のズレはどうしたらよいのか」「ルールを守る自分とは何者なのだろうか」など「どんなルールでも必ず守らないといけないのか?」を多角的に問い返す対話になっていきました。

15分の哲学対話の体験の後、今度は参加者全員がサークル上に座り、リフレクションを行いました。哲学対話を通してどう感じたのかどんな気づきがあったのか出し合っていきました。

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「ルールを守る主語が自分なのか集団全体なのかによって違いがあるのか違いがないのかなど考えさせられた」「校則と法律の共通点と違いを考えるツールとしてこの問いは活用できる」などと深まっていきました。

リフレクションが進んでいく中で、土屋先生は時々コメントを挟みました。たとえば、『探究などのグループワークで生徒同士が対話はするけれど、「問い合う」展開になかなかならない、そこにこのような哲学対話の体験をすることが役に立つのではないか』という気づきが語られたときに、土屋先生は『「問い合う」という対話は哲学対話の中でもそう簡単ではないけれど、ビコーズゲームなどを使ったりするのもよいですね。いずれにしてもそれは体験を積むことによって生まれてくる』と返答しました。

講義→体験→リフレクション→フィードバックというワークショップの流れ自体が参加された先生方に哲学対話の着想をファシリテーションするデザインになっていたようです。

参加された先生方にとっては、互いの考えを安心して語られる環境が哲学対話の基礎であると同時に、問い合い、語り合うことで、お互いに自分の考えが深まっていく哲学対話の研修となったようです。

したがって、今回のワークショップも参加した先生方の満足度は非常に高いものでした。先生方がどのような動機で今回参加したのかアンケートの回答を紹介します。このモチベーションが達成された研修となったのです。


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