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研究所たより
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研修なくして私学なし-③

2011-01-28

實吉協会副会長と清水所長の対談『研修なくして私学なし』のシリーズも最終回を迎えました。

③≪哲学する力、人との関わりの中で関係する力、創造する力≫ 

 ○清水 

例えば研修の内容を教科というものに限定すると、ある意味ですごくとっつきやすいんですよね、

ベースがあるから。だから、同一教科の研修会は、かなり話が盛り上がる。

そういう現実があるから、そういうものを全部なしにして精神論的なことだけで研修を組むというのは、

戦略的には私はよくないというか、やり方としてあまりうまくないと思っているんです。

 

○實吉 

ただ趣味的な範囲で企画して、それだけで終わりというのから、

その裏付けがそこに入るようなやり方というのを、もう少し意図的に

プログラムをしてあげるということだね。

 

○清水

子どもたちもそうですし私たち大人もそうですが、やはり哲学する力、人との関わりの中で関係する力、

そして創造する力をつけるために日々私たちはいろいろな研修を受けるという、

この三つの枠組みで捉え直しをしないといけない。

スキルアップを図るということは大変大事なことなんだけれども、その前提みたいなところに

きちっと視点をあてて研究所の仕事全体をつくっていかないといけないのではないかなと思っています。

人との関わりということで言えば、今の先生方は他者とどのように接したらいいかという経験則は、

ゲームや少子化の影響も関係しているのでしょうか、私たちの世代と比べたら違うと思うんですね。

かなり少ないとみなければいけない。でも、それはその人の責任だと一言では言えません。

そういう時代だったことも多分に影響していると考えるべきでしょう。

「だからあなただめなのよ」という言葉は避けたいですね。

 

○實吉 

それに、例えば私が自分の学校の教員のことをちゃんと理解できているかというと、

学校の中のことだから上司・雇用者という関係になりますよね。

そうなると労働問題も含めて、言えないじゃないですか。

でも、研修会では私はほかの学校の先生に平気で、

「あなたたち、先生、先生というけど、先生って何?」と言っても、

それは不当労働行為にもならないし、そういう部分も必要なのかなという気はするんですけどね。

 

○清水

えぇ。そういうことも含めて、研修の場は他者とどういうふうに接したらいいかということを

見つめる環境なのではないかなと思っているんです。

しかし、現場では先生方の時間的な制約がすごく増えていませんかね。

 

○實吉

増えている。余裕がない。例えば研究所の夕方6時から始まる研修会がありますが

「行け」と命令しづらいんだよね。自分で「これ行ってもいいですか。カネください。」と言ってきてくれないと。

まぁ本来なら、自分で研修するんだから、そんなの自分でカネ払って自分の時間を

使っていけやという話なんだけれども。ともかく、そういう意識を持っている先生って少ないよね。

 

○清水

本当に少ないと思います。放っておいたら行きませんから。

その辺は、正直いって私の若いころとはまるで違う。

それで私は学校で先生方には「理事長から許可を得たから、研修予算枠をオーバーしても、

皆さんには研修に行ってもらいたい。研修なくして私学はないんだから」ということを言いました。

今は時代も違うし、ちゃんとそこまで学校としてはフォローしてあげないと、

研修には行きづらいのかもしれないですね。

現場にうんとウエートがかかっているために、今までだったら少し外して研修にいっていたのが行きづらくなっている。

でも、そこで負けてしまうと、かえって泥沼に、悪いサイクルに入っていく。

だからこそ研究所は、先生方が時間をつくってでも来たいと思えるような、

魅力的なプログラムをつくっていかなければいけない。

 

○實吉

どういうふうにしてくみ上げていくか。

専門研究員がいないというのはつらいよね。

 

○清水

けれども、うちの研究会は現場の先生が委員を構成していますよね。

先生方の中で創っていくという伝統がある。これが結構いいかなと思っています。

委員が一生懸命、ああでもないこうでもないと討議して、こういう企画をしようというやり方は、

もっと買ってあげていいのではないかなと思います。

 

○實吉

中堅の流れから発生して今年度本格的に動き出した教職員資質向上研修の委員会を見ていると、

ああいうコラボレーションは本当にいいよね。

 

○清水

学校教育相談研究会は委員の先生でカウンセリング講座のプログラムを組んで一から始めている。

これはさすがですね。みんなの力を引き出して、「今回はあなたがトレーナー」という具合で、

みんなで回しながらやっていきますから。責任を持ちながら自分たちでつくっていく会なのね。

 

○實吉

そういう研修会が研究所でもっとできていくといい。

 

○清水

カウンセリング講座のようにネットワークづくりをしておくと、

研修会終了後、「はい、終わりです」ではなくて、

そこがまたスタートラインになって、みんなでネットワークが組まれていく。

 

○實吉

だけど、本当のことを言うと、

その研修会のネットワークとまた別の研修会のネットワークがどこかでジョイントしないとね。

 

○清水

そういうふうになるような仕組みづくりをやると、かなり私学としてのネットワークが、

まさに「点から線へ、線から面へ」という流れになるんだろうなと思うんです。

その中で研究所は、芽を持っている、芽吹いている人たちが絶対いるはずだから、

それを見つけなければいけないんだと思っています。

やはり教育は人の成長変化を求める仕事ですから、

「人は変わるはずだ」を前提に、研修を企画・実施していきたい。先生が変われば学校は変わりますから。

それでは最後に實吉先生まとめていただけますか。

 

○實吉

私はクリスチャンでも何でもないのですが、アメリカのプロテスタントの神学者ラインホルド・ニーバーが残した言葉です。

今年の中堅現職研修でもお話しいたしました。

 中堅現職研修でお話しされる實吉先生

 
   「神よ、
    変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
    変えることのできないものについては、それを受け入れるだけの冷静さを与えたまえ。
    そして、
    変えることのできるものと、変えることのできないものとを、識別する知恵を与えたまえ。」
 

変えていかなければいけないということがあるとすれば、それを果敢に変えていこうとする勇気。

どうして変えられないのだろうと嘆くのではなくて、変えることができないということを認める冷静さ。

それから、いやどっちなのだということを識別できる知恵。

ぜひ研究所の研修にお越しいただいて、自己研鑚を積んだり、教員生活を振り返ったり、

仲間づくりをして、生き方の糧にしていただけたらと思います。

 

 ○清水 

ありがとうございました。

 

当研究所の中堅現職研修は、清水所長も長年委員として関わり、實吉副会長が委員長を

お務めになっている研究会です。今年度も越後湯沢で実施した中堅現職研修に参加された、

ある先生が最終日に述べられた感想を最後にご紹介します。

今後とも当協会東京私学教育研究所をよろしくお願いいたします。

 

「私も「中堅」と言われるようになりまして、職場でいろいろ悩みを抱えて、

今までは言っていたものを言わなかったり、調整役に回ったり、そういったことも多くなりました。

いつの間にか職場の中で熱く語ることをためらうような場面もたくさん最近出てきたように思います。

今回、学校の外でいろいろな人と話をさせていただいて、

教育に関して熱く語ることがとても新鮮だったというか、励まされました。

自分も心の奥底では熱い気持ちはあったんですけれども、

ふだんなかなか自分の同僚とそういうことを話せなかったもので。

けれども今回、「これでいいんだな」と。自分の熱い部分もこのまま大事にしていいんだなと思いました。

やはり研修というのはとても意味があるんだと思いました。

変えられないもどかしさとか、あるいは変えたいんだけれども、

なかなか勇気を出して言えないこととか、こういったことがたくさんある世代に自分もなったんだと思いますが、

ラインホルド・ニーバーの言葉を胸に刻んで、本当に勇気づけられました。

この研修を糧として、自分の学校に帰り還元できるように頑張りたいと思います。

東京へ戻っても会う機会があるということなので、また熱く語れるときを楽しみにしています。」

カテゴリー:研究所だより
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